手元にある15年前の音楽誌、そこに掲載されている「80年代ベストアルバム」という特集で、ある評論家の方が書かれている一文が妙に心にひっかかっています。
”二人の愛はいまでも特別なものだけど/新たなチャンスを求めて飛び立ってみないか” と、ジョンが歌いかけ、その声がまともに届かないうちに銃声が響きわたり、幕を開けた80年代。そして、過去に同じ時代を生き抜いてきたミックは、”おまえ一人じゃないぜ、複雑な気持ちなのは・・・/お前が唯一の船じゃないぜ、この広い海に漂っているのは” と、「ミックスト・エモーションズ」で歌って、90年代に突入しようとしている。
ジョン・レノンがアルバム「ダブル・ファンタジー」でカムバックを果たしたちょうどその頃に全米トップ40を聴き始め、以後80年代の洋楽に親しんできた自分にとって、とても共感できる表現です。
正直、ジョン本人や彼の創り出した音楽に特別な思い入れがあったわけではありませんが、あの事件でジョンが還らぬ人となったことで、こんな僕にも「スターティング・オーバー」は特別な響きをもつことになったのです。自分と洋楽の接点を象徴するものとしても、忘れられない一曲です。