実は最近、頭の中で繰返し流れる曲があります。バート・バカラックの28年ぶりのオリジナル・ソロアルバム「At This Time」からの1曲。歌っているのはエルヴィス・コステロ。
大御所の新譜なのに、ブログなどでもあまり取り上げている人がいないようで、このアルバム、評判が良くないのかなあと思っていたら、日本盤がまだリリースされていないとのこと(2月22日発売)。
恥ずかしながら、バカラックのことは名前しか知らなかった自分。あれは昨年末に仕事で上京したときに立ち寄ったHMVでのこと、店内のある一角に差し掛かったとき、ただならぬ「視線」を感じたのです。無数に並んだそのCDジャケ、ニヒルな表情でこちらを見つめるバカラックがそこにいたのです。
久々の「ジャケ買い」でした。77歳のじいさんにやられた(笑)。
ネット上のニュースによると、バカラックは自身の子どもたちが軍隊に行かなければならない事態を恐れており、「楽曲だけでなく、熱烈に自分の考えを表明する必要があった」として、このアルバムでは作詞にも取り組みながら、強烈なブッシュ批判を繰り広げているとのこと。
メッセージそのものについての私見は、ここでは触れませんが(というか訳詞がないので分からない)、音楽的には、バカラック自身が「これまで私が手がけた中で最も情熱的な作品」と語っているとおり、重厚でドラマチックな曲がズラリと並んでいます。
コステロがヴォーカルをとる「Who Are These People?」、直訳すると「そいつらは誰なんだ?」。
バカラックがアルバムについてインタビューで語っている「私たちの人生を支配しつつある連中は一体何者なのか?どうしたら彼等の暴虐を止められるのか?」というメッセージとピタリ符合します。
ストリングスをフューチャーしたオーケストラっぽいサウンドに、コステロの切々と歌い込んだヴォーカルが入ってきて、メロディーの物悲しさが一層強調されます。伝えたいものがある、その意志の強さを感じる曲。メロディーが頭から離れません。
他にも、気鋭のシンガー(ソングライター)、ルーファス・ウェインライトをヴォーカルに迎えた曲も聴きもの。彼の歌は初めて聴きましたが、どこか若い頃のビリー・ジョエルの歌声を彷彿させる瞬間があります。