スティングのこの曲を初めて耳にしたとき、メロディーラインは「分かりやす過ぎ」、曲調は「妙に明るい」気がして、なんだか平凡な曲だなあという第一印象だったこと、よくおぼえています。ショックだったと言っていいでしょう、普通のポップソングじゃないか・・・と。
そんな疑心暗鬼な状態で、アルバム「Soul Cages」を買ったのですが・・・ ライナーを読み、曲の意味や背景にあるものを噛み締めながら聴いていったら、泣けてきました、本当に。このアルバムには、スティングの父親の死が重くのしかかっています。
「もし僕が好きなように出来るなら、海に船を漕ぎ出したい。そして一人ひとり海に眠らせてやりたい」
僕が凡庸なポップソングと感じた「All This Time」には、実はこんな泣かせる言葉で父親への思いが込められていたのでした。重く深い思いを、ポップで軽快な曲調に乗せて歌うスティング、そのギャップが切なく、「魂のうた」に胸をかきむしられる思いです。
前作「Nothing Like the Sun」では、「Englishman in New York」「Fragile」といった名曲をものにし、テレビCMにも登場して、ポリスを知らないリスナーも含め、確実に新しいファン層を獲得したスティングでしたが、この「Soul Cages」の重さに戸惑ったリスナーも当時多かったようです。
「私もそうでした」と言う方、そして「All This Time」の意味を知らなかったと言う方がいらっしゃったら、いま一度このアルバムを聴いてみてください。10年以上たって、当時のスティングの思いが染みてくるかもしれません。